それではセカンド・シーズンの第11回から最終回(第20回)までをどうぞ。
第11回:深夜高速/フラワーカンパニーズ(2004)
「このコラムもう飽きました」
という声が聞こえる。幻聴なんかじゃない。わかってる。
リツイート率の減少からもそれは明白だ。
それでも書き続ける行為を修行と呼べば「これは通過点」的な言い訳になるだろうが、アラフォー糞野郎のお前が今さら何を目指して修行するんだよ、このバカ!と神様にどつかれたら返す言葉はまるでない。
修行ではなく「深夜高速」冒頭の歌詞に出てくる〈青春ごっこ〉をやっているだけ。というのがドンピシャだ。あまりにドンピシャ過ぎて真顔で失禁しそうになる。
フラワーカンパニーズはどちらかというと登場した当時はヤングであることを最大限に利用したPOPでロックな「よくいる明るいバンド」だった。チャラいなとすら思った。
しかし、人生の闇を何度も乗り越えて、インディーズからこの曲を出した時のフラカンの鬼気迫るライブは本当に忘れられない。
〈生きててよかった そんな夜を探してる〉
この必殺のフレーズでフラカンは、と言うより日本のロックは変わった。
大人のバンドほど生き様を曝け出しその人自身に凄みが増してくると、ライブがとんでもなく生々しくなっていく。フラカンは圭介とマエカワのMCがすこぶるバカバカしくて面白いからそのバランスも絶妙だ。
体が続く限り一生ライブをやると宣言しているフラカンだが、そこまでしてなぜライブをやるのか、理解出来ないという人もたくさんいるだろう。
このコラムも飽きられたからやめますでもいいんだろう。
もしくは読みたいアーティストを募集とかして、読者への擦り寄りも考えた。
しかし、コラムとはいかに自分のオナニーを楽しんで鑑賞してもらうかだと思うから、ラジオみたいなことはしたくない。
頑なに週一かつ誰の意見も寄せ付けず独りよがりで続けて行く。それが男だ。
それで結果飽きられたならそれも本望だ。
〈生きててよかった そんな夜はどこだ〉
そんな夜は死ぬまでないかもしれない。しかしいつか訪れるその夜まで修行という名の男のコラムは続くのだ!
というわけで読みたいアーティスト大募集!!竹下さんか俺まで連絡お願いしま〜す!こんな風に書いたらどうかなどご意見、アイデアやアドバイスもどしどしお寄せくださいネ!!
メールを頂いた方の中から抽選で200名様に「手作りで不気味!仏滅くんストラップ」をプレゼント!!感想などもお待ちしていま〜す!!
第12回:サマーヌード/真心ブラザーズ(1995)
好きなアーティストとかバンドって誰?と聞かれて、ここ十数年その筆頭に挙げてきたのは、何を隠そう真心ブラザーズである。
真心ブラザーズは爆発的なヒット曲もなければ、いまだに「あー、負けない事投げ出さない事〜の人だっけ?」とブラザーズしか合ってないのに大事マンと間違われてたり、「どか〜ん好きだよ!」ってそれは合ってるけど古りーなオイッ!とか、「YUKIちゃんの旦那さんがやってるヤツでしょ?」ぐらいの認識しかない人とか、いやいや俺からしたらむしろYUKIちゃんがYO-KINGの奥さんなんだけどなとか思ったりする、とにかく色々残念なのだ、ファンとして。
それでもツアーをやれば満員だし、フェス系では大御所扱いでメインステージだったりもするんだけど、ツアーに来る人はファンなわけだし、フェスに来る人はその辺の音楽が好きな人達だから、やはり前述の辺りの人達に見てもらってギャフン!と言わせたい!と常々思っている。
真心ブラザーズは1989年デビューの、主に歌うYO-KINGこと倉持陽一とたまに歌うギターの桜井秀俊による二人組バンド。
真心の歴史は大きく三期に分けられる。
初期のフォーク期、THEが名前から抜けてからのミクスチャー期、そして現在のポップ全開のロック期。
フォーク期の真心は若さと馬鹿さが入り混じったひねくれ度全開やり放題のイメージ。苦手〜とか言う人は少なからずいただろうし、本人たちもそんな人達は聞かなくて結構という感じだっただろう。なんせ「きいてる奴らがバカだから」なんて曲があったぐらいだから。
しかし、突然真心は変わる。フォークに飽きたと言わんばかりにストリートに降り立ち、ナイキのスニーカーを集め出し、エレファントラブというユニットでラップまでかまし出した倉持の溜まっていたロック魂が噴出。未だに筆者の揺るがない人生の名盤「KING OF ROCK」リリース辺りのライブを見た当時の奥田民生に「真心は真心を無くしてしまった」と言わしめた。
時を同じくして何故か桜井のポップセンスも開花。「KING OF〜」リリース直後に表題の「サマーヌード」というJ-POP史を塗り替える大名曲を発表する。
YO-KINGはその後もレゲエやパンクやヒップホップなどを上手く取り込んで遊びながら、軸となるロックモードを貫き「拝啓、ジョン・レノン」などの名曲をどんどん生み出していく。そこに桜井の溢れ出す天才的ポップネスが加わって真心黄金期が訪れるも2001年に一度活動を休止。2005年に復活。それからはソロ活動もやりながら、ポップでロックな真心を続けている。
「サマーヌード」は夏の日の切ない恋の歌。歌詞があまりにも青臭いため、当時のインタビューでは「こんなこと思ったこともない」とYO-KINGが語っている。
〈そうさ僕ら今
はしゃぎすぎてる 夏の子供さ〉
というサビが一番有名だが、特筆すべき、というかこのワンフレーズに当時、本当に淡い恋をしていた俺は撃ち抜かれた。
〈その髪の毛で
その唇で
いつかの誰かの感触を君は思い出してる〉
だもの。マジか⁉ですよ。
でも女ってのはそういう生き物だというトラウマ的諦めがついたという意味では重要なフレーズだったと言える。
真心ブラザーズとは俺の青春の教科書であった。
YO-KINGの徹底した自己肯定という生きる上での哲学を、桜井秀俊のポップな曲の中に眠る恋という猛毒の取り扱い方を、吸い込みまくって生きてきた。
よくよく読み返してもボケてもいなければ、面白くも何ともないことになってしまったが、真心ブラザーズ聴いてみようかなと一人でも思ってくれたならば今回はもうそれでいい。
夏でもないしおじさんなのにはしゃぎすぎた。
すみません…。
第13回:ミッキーマウス・マーチ(1955)
日本の若者の青春とディズニーランドは蜜月である。
修学旅行で行ったり、恋人同士で行ったり、好き嫌いは置いておいて30代以下の若者たちはディズニーランドに纏わる青春の思い出、シンデレラ城の前で初キスしただの、トムソーヤ島で告白しただのそりゃ良かったね。はい、死んで!ってヤツも含めて少なくとも一つは胸に秘めているものだろう。
しかしなぜディズニーランドはいまだ特別なのか?
チケットは安くないし、食べ物も安くないし、お土産も安くないし、人はとにかくいつ行っても多いし、一日の半分は並んでるし、夜になるとかなりの確率で疲弊している。
それでも人々はディズニーランドへ向かう。
「そこで一日でも現実を忘れたいんだよ」
そんな声が聞こえるが、実際あんだけ並んだり、支払ったり現実味の溢れ方、エゲツなくないすか?
いや、そんなの野暮だ。
ミッキーやミニーがパレードで手を振り、キラキラした顔で彼女が手を振り返しながら、写真を撮りまくる時、確かにそこには現実は存在しない。
初デートで奮発してやってきて花火が打ち上がったその時、彼女がキスしてきたあの瞬間にホカ弁バイトのウザい店長や、いつも絡んできてうるさいことをほざきまくる兄貴の友達はいなくなる。
青春の時代、筆者も何度ディズニーランドに行ったかわからない。
中学の修学旅行もディズニーランドだった。
入園して1分以内にパスポートを失くし、当時は提示しないとアトラクションに乗れなかった(と、思う)から、ほとんどふてくされて一日が終わるというビターな思い出もある。
当時好きだった女子が「篠田くん写真撮って!」と近づいてきて「マジか!」と思ったら、シャッター押す側だったというあまりにもベタなトホホエピソードだってある。
スプラッシュマウンテンの落ちる瞬間の勝手に撮られる写真のはしゃぎすぎの友達にまず引いて、さらに俺は顔を完全に伏せていて「これいらねーなー」と思いながらみんな買うっていう流れに逆らえず買わされるその写真の白々しさ。「それいるの?」と思う代表のグーフィーの被り物などやたらとお土産を買うクラスで目立たないメガネ女子。いつ見ても教室の隅でボーッとしてる山田がワールドバザールのベンチで、ここでもボーッとしてるのかよという衝撃。堅物の社会科の根岸先生がスペースマウンテンにニコニコしながら並んでるあの非現実感。好きなあの子が数人前に並んでて同じボートに!と思ったらばっちり分かれるカリブの海賊のボートの人数設定の甘さ。「今日こそ究極の隠れミッキーを見つけてやる!」と一日中アトラクションそっちのけで隠れミッキーを探し続けたアホの小林が結果集合時間にも帰りのバスにも間に合わず「お前が隠れてどうする!」と一番気の毒な言い方で怒られるなど。
たった一日のディズニーランドに我々が何万も支払うのは、現実逃避に違いない。
そこを出た瞬間に訪れる京葉線でどこまで出てどうやって帰るかをミニーの耳をつけたまま悩み、電車に乗り込む瞬間に外す、その一瞬までは。
第14回:primal./BiS(2011)
今日という日に彼女達のコラムを書かないわけにはいかないだろう。
とはいえ「今日何なの?」「そもそもBiSって誰?」という声がまだまだ聞こえてくる。
BiSとは新生アイドル研究会を名乗る五人組アイドルグループ。2010年に結成。メンバーの入れ替わりを繰り返し、ようやく現在の5人に落ち着くも、体調不良を理由にワッキーことワキサカユリカが両国国技館ワンマンライブをもって脱退。
しかも1300人規模のライブハウスしか埋めたことのない彼女達がそのおよそ十倍規模の両国国技館ライブを行うという無謀さ。ライブ二日前にして6000枚以上のチケットが余っていると自嘲気味に運営がもらしている。
そのライブが本日3/16なのだ。
彼女達の名前を一躍有名にした全裸PVをはじめ、のちに「今揉めるアイドル」というキャッチフレーズがついたスクール水着でダイブしたライブ、Ustreamで流し続けた24時間100キロマラソンに脱退寸前までメンバーを追い込んだメンバー内抗争(この時のゆっふぃーのブログは今思い出しても壮絶)、最新のPVも血塗れで何が何だかよくわからないし、その他興味がある人はもっと詳しく調べてみて欲しいのだが、とにかくまぁ、センセーショナルであることを解散するその日まで徹頭徹尾貫き通すことを宣言している、いわゆるアイドル界の異端児なのである。
それよりも何よりも彼女達の最大の魅力は楽曲の素晴らしさに尽きるわけで、破天荒なことをやりまくって話題作りをし続ける反面音楽がショボいんじゃ話にならないのであって、そこは本当に彼女達の運の強さと言ってもいいだろう。
だから何というか「アイドル」というよりも、「アーティスト」としての肉体がまずしっかりあって、その「アイドル」という枠の中でドキュメントとしてどれだけ遊べるかということをやっているグループという解釈。
出しゃばりだが彼女達の飼い主である名物マネージャーじゅんじゅんとリーダーでありBiSを作った張本人プールイはそこを俯瞰で見て的確なジャッジを出しつつも、ど真ん中でもみくちゃにされており、その葛藤がダイレクトに活動に反映されるというまさに今青春の只中にいるわけだ。
それを研究員と呼ばれるファン達があまりにも優しい眼差しで見つめ支えており、それが何だか毎回ライブで目頭を熱くする理由なのである。
彼女達は活動の最後を日本武道館と定めていて活動期間もニ、三年と言い切っており、メンバーのミッチェルことミチバヤシリオは「就職するつもりです」と早くから脱退を示唆、プールイもかなり過激なグラビアをプレイボーイなどでさらし、「ルイニーしてください(※ルイニー=プールイでオナニーのこと)」などとインタビューであっけらかんと語った後「(AV業界からの誘いを)1年後はわかんない」と笑っている。
このBiSという名の刹那。
それはまさにバカバカしいことばっかりしながら、もがいて怒って泣いて笑った青春てヤツに似ていてだからこそ愛おしくあまりにもエモいんだろう。
また真心の時のような思いが前に出過ぎの回になってしまったから最後に俺とBiSのエピソードを一つ。
アートと音楽の融合したイベント「ぐるぐる回る」に出展した時、BiSも出ていて、ライブ終了後に推しメンのぞしゃんと握手、自作のポケットティッシュを渡したのだが、その後下北沢のライブハウスで「あの時ティッシュを渡したモノですけど」と話したら「あ…」と二秒の沈黙があり「あー!使わせてもらいました!」と満面の笑み。ぜってー覚えてねーし!!
のぞしゃん。エモい思い出「エモい出」をありがとう。
第15回:Captain of the Ship/長渕剛
(1993)
「熱血」という言葉が通用しない時代になった。何かに熱くなってる人を嘲笑うような時代になったのだ。
ちょっとムキになると「そんな熱くなるなって」とすぐにクールダウンさせられてしまう。
熱いというのは青春ならではの形容詞だ。「無駄に熱い」ってみんな平気で使うけど、無駄な熱さを持たない人生って何なんだよ?と真顔で感じる。でも結局また同じことを言われてしまうだろう。
長渕剛はクラブミュージックを嗜むオシャレ系男子女子から圧倒的に需要がない。中田ヤスタカも好きだけど長渕剛も好き!っていう人に未だかつて筆者は出会った試しがない。原宿女子がアルバム「昭和」ヘビロテだったらかなり面白いのに、そういう子はそういう子が聴きそうな音楽しか聴いてないんだ残念ながら。ちなみに筆者はPerfumeもきゃりーちゃんも好きだけど、長渕剛のアルバムは何枚も持っているし、人生のアンセム5曲に「しゃぼん玉」が入ってるのだから、相当なレア種と呼べるのかもしれない。
先に述べた熱さみたいなものを、暑苦しそうに変換して、聴かず嫌いの人も多いのが長渕の特徴で、それは何だかとってももったいないと常々思っているのだが、先日しゃべくり007に出た長渕はムッキムキで腕立て伏せしたり、有田やホリケンをどつき合わすなどしてラストには「殺気」と大きく書いた書を贈るなど、確かにこの感じ、今から入っていくには結構キツイかもなぁとは思った。
そんな長渕剛の熱さ全部入りの一曲がこの「Captain of the Ship」だ。実に13分に及ぶ大作で、ダウンタウン松本がガキの使いのトークでこの曲の凄まじさを興奮気味に話したことでも有名だ。
人生を大海原に例え、荒れ狂う波に立ち向かうお前(聴き手)こそその船の船長だ、だから生きろと歌う。ヨーソロー(船乗りによる号令)が延々と繰り返される後半は圧巻。
挫折を一度でも味わった男はこの曲をヘッドホンかつ大音量で真っ暗にした部屋で聴いてみたらいい。
もうこれは完全に音によるセラピーなのだと気がつくだろう。
打ちのめされた時に聴く長渕剛とエレカシはもはや音楽ではない。
特効薬でしかない。
熱さは無駄なのか?ということを無駄な熱さで夜な夜な語り明かしたりしながら、明け方のカラオケでまた長渕剛なのだ、きっと今夜も。
ヨーソローヨーソローと声が枯れるまで。
第16回:ザーメンブギー/豊田道倫&ザーメンズ(2011)
夜の街を歩いている。
昔から一人で夜の街を徘徊している。
夜は何も答えをくれないし、知ったこっちゃないと知らんぷりしてくれているから、俺はまた夜の街で考える。
それこそ中学生の時から、古くはカセットテープを突っ込んで、CDウォークマン、MDウォークマン、現在のiPodに至るまで、好きな音楽を流しながら夜の街をただひたすらに歩いている。
職質だってかけられるし、若い頃はカツアゲにだってあったし、PTAと名乗る人達に「指導」頂いたこともあったし、なぜかホームレスに追いかけられたこともある。
それでも夜の街には何かが眠っていて、めげずに俺はただただ歩く。
俺の中のルールがあって、例えばファミレスや喫茶店、ベンチなんかに立ち寄らない、座らない。立ち止まらないでとにかく歩く。2〜3時間と決めたらその間は止まらずに歩く。
雨の日だって歩く。風強めの日だって歩く。雪の日も歩く。煙霧の日も歩く。あの娘にフラれた日だって歩く。上司にあたるあのクソ野郎に酷い言葉で詰られた日も、お腹が痛い日も、コーラを押したのにコーンポタージュが出てきた日も、泣きながら、笑いながら、怒りながら、しょげながら歩く。
歩きながら考える。
今日のこと、明日のこと、あさってのあのめんどくさい仕事のこと、TSUTAYAのカードの期限切れが近いこと、石川佳純ちゃんのこと、自民党のこと、黒田夏子が処女だってこと、出川と狩野のこと、死んだ猫のこと、峯田は今何を考えてるのかってこと、ももクロの新しいアー写やりすぎってこと、旅猿にベッキーいらねーってこと、あのAV女優はあんなに可愛いのに何でカンパニー松尾に抱かれんだろうってこと、貴島サリオっていたなってこと、コラム面白いです!ってDMくれたあの娘はヤラセてくれんのかってこと、アクションをやめるジャッキーチェンのこと、恋と童貞のこと、大江アナ不在のモヤさまのこと、別れたあの娘のこと、友達の結婚のこと、いいとものこと、「暗闇から手をのばせ」いつ観るかってこと、タモリ倶楽部のこと、テラスハウスムカつくってこと、井森美幸の変な踊りのこと、絶望峠っていい名前だなってこと、市川塩浜って本当何もねーなってこと、家族のこと、オダギリジョーの打ち切りになったドラマのこと、森翔太さんのこと、作ってるジンのこと、西船橋のデリヘルのあの可愛い娘の出勤日のこと、スナック心のこと、秘太郎プロダクションズのこと、神のこと、自分のこと、今日のこと、明日のことを。
そして大好きな豊田道倫&ザーメンズのアルバム「アンダーグラウンドパレス」でも聴きながら歩くのだ、今夜も。
今夜もまったく何にも全然さっぱり答えは出ないだろうけど。
第17回:小さな恋のうた/MONGOL800(2001)
過去二回もカラオケ屋でバイトした経験がある。
カラオケとは何なのか?
バイトしていた時もよく考えていた。
友達や上司、知り合いや家族など身内が歌うのをただただ聞かされて過ごすという、それだけの時間にお金を払う娯楽。
カラオケバイトで深夜の休憩中、歌い放題の環境にいたのだが「どうぞ好きなだけ歌って」と言われるとたいがい歌う気は失せる。だいたい休憩ん時はまかないで店のメニューのエビピラフとメロンソーダ、休憩で使われる部屋だけテレビが見れたりするもんだ。
たまに合コンで盛り上がってカラオケオールになったりすると、3時ぐらいには半分は寝出し、歌好きの女の子がひたすら渋い選曲で歌っていて、朝4:50に「あと10分で閉店で〜す」と部屋にコールが来て、片っ端から起こして回る。「あれ?みゆきちゃんは?」って探して回ると他の使ってない暗い部屋で寝てたりする。で、みんなしわしわの顔して無言で駅に向かうというしょっぱい流れ。
「帰っときゃ良かったな〜」とか最低一人は寒い朝方のホームでひとりごちる。「お前が一番ノリノリだったじゃねーか」と言いたいけど言う気力もない。
あれを一人で何時間もやる人もいるし、友達と一日中いるって人もいる。
カラオケでまぁ、ほぼどの世代もシンガロングできるキラーチューンってのが何曲かあるが、モンパチの「小さな恋のうた」は誰かが入れたらだいたいそこにいるみんなで大声で歌うということになる。この曲の深夜一時の大合唱が完全にその日のピークなわけなのだが、その時点では誰もまだそれに気づいていない。
カラオケバイトあるあるの一つに部屋でコトをしてる悪いカップルというのがあるが、店的にはけしからんだが、バイト的にはありがたい。なぜならそれによって明らかにバイト内の結束力が高まるからだ。
202、どうやらごにょごにょしている。その殺気にバイトリーダーの堀田さんが気づいた時から、バイト達は普段はありえないほどのチームワークを発揮。
「204、205アップしまーす!」みたいな片付けるのを装って、すぐさま偵察隊が数人放たれる。
確認出来たらフロントの二人に内線。その後厨房チームにもリークされ、202にほぼその日の出勤バイト全員がお礼参りすることとなる。
カラオケを安上がりのラブホと考えないほうがいい。その行為は見られている。
店に備え付けのマイク以外は握らないことだ。
という最低のオチで締めて見るのなんてどうだろう?
第18回:Butterfly/木村カエラ(2009)
数少ない親友が結婚した。
青春の終わりを結婚という人も多いし、結婚した友達のほとんどは今までみたく遊べなくなるし、友達の結婚に対しては寂しさだけじゃなくため息のがちょい多めだ。
でも結婚とは幸せな家族になることなわけで、そこに子供とか加わって、年賀状とかで子供に漫画の吹き出しつけて「1歳になりまちた!」とか見ちゃうと、やっぱり祝福してやりたくなる。
過去二回、結婚式の二次会の司会をやった。
それなりに回して笑わせて「プロになってもいいんじゃないか?」なんて言葉までもらったけど、これが友達でも知り合いでもなかったら全然回せる気がしない。実際、てんで無理だろう。
披露宴で歌ったことも二回ある。しかもどちらもオリジナル曲。
一回目は新郎新婦が号泣してくれたからまだ良かったけど、二回目は大地が揺れるほどのドンズベリだった。(「三年目も本気」というタイトルの女子との歌謡曲デュエットだった。歌詞を担当)二度とやらないと決めた。
このようにてめーはしてないのに加齢に伴い参加率が上がるのが結婚式だ。
そこで今一番女子たちが歌うのが木村カエラの「Butterfly」なんだそうだ。
確かにいい曲だし、これ歌ってあげる私ベタだけどセンス悪くないでしょ?って感じで人気があるのも頷ける。
唐突に志村と田代の「ウンジャラゲ」をかますような強いバイブスを持つ猛者は現れないものか?
まぁ、確実にドンズベるし、その式には参加したくないけど。
この歌の時間やスピーチも挟んで、お色直しして、二人の歴史ビデオが流れて、ケーキ入刀に両親への手紙と披露宴て、何が起こるかわかり切ってるのに何でみんなやりたがるんだろう?
せめて二次会は恒例のビンゴとかじゃなくて、気の利いた面白いことがしたい。したいけど、揉んで揉んで揉んで揉んで、やっぱりビンゴに戻るのがセオリーだ。ぶっ飛んだことは基本出来ない。それは日本人の「一生に一度の行事をふざけたくない」という真面目さによるところが大きい。
俺仕切りの時は新郎新婦の歴史クイズなんてのをやったけど冒険してもそんなもんだろう。
自分が万が一結婚式なんてものをやって、二次会に臨むならプランはある。
まずどう考えても新郎新婦が別人。出来たら外人。出来たら黒人がいい。困惑する客の中に俺たちが紛れ込みビンゴ大会に参加。そのビンゴ中に殺人事件。犯人探しが始まり、劇団員の知り合い主導で物語が進んでいく。結局犯人は実の嫁。嫁逃走。旦那である俺が撃ち殺す。すると、別の場所からドレス姿の嫁が現れテッテレー!と、いうとこまでは考えてあるのだけど、嫁になる人が却下だろうし、もう書いちゃったからやらない。
一番初めに書いた親友夫婦には二人とも大好きだから、上記に近いプランで俺仕切りでやってあげたいと思っている。とりあえず、夫婦が中尾彬夫妻になっている、というところから考え始めることにしよう。
第19回:ノロマが走っていく/Theピーズ(2005)
「私はドジでノロマな亀です」
と、堀ちえみが目を潤ませていたのは何年前のことだろうか?
亀もノロマまでは引き受けていたけど、ドジとまで言われるとは思っていなかっただろう。
SEXに早漏と遅漏が存在するように、人生そのものにも早いと遅いは確実に存在する。ただし、人生においての早漏は勝ち組で遅漏は負け組である。
偏見ではあるが早いヤツは何もかもが早いし、遅いヤツは何もかも遅い。
中三ぐらいで童貞を捨ててサッカー部で花形、高校も進学校にちゃんと進んで親も金持ち、大学では成績トップでモテまくり、就職先も大手で26ぐらいで可愛い奥さんと子供がいる。親父からマイホームのプレゼント。趣味はサーフィン。みたいなヤツがいるんだから実際。
その真逆の例を書こうと思ったが涙で滲んでうまく書けないので省略させて頂きます。
Theピーズはそういう人生遅漏組に対してエールというのとは違う独特な鼓舞をし続けているバンドだ。
ピーズが救った命がいくつあるだろう。筆者もその一人である。
でもたぶんピーズは、というかハルは「救った覚えはねえ!」と赤ら顔で言うはずで、だからこそ信用できるわけだけども。
ピーズは1987年にデビュー。1997年に活動休止。2002年に復活。新曲を作りながら、ツアーやフェスなど、いいペースの活動が続いている。
2005年の超名盤「赤羽39」の中の一曲「ノロマが走っていく」は、青春をこじらせて、毎日が仏滅に感じる、一人で夜な夜なDISCO(もちろん自部屋で)、という文字通り青春仏滅DISCOな人達の間違いなくアンセム。
歌詞だけで泣ける人は同志。
〈戻らない人生も 半分はとっくだな
マチガイも温めよう 今更リセットもないさ
死ぬまで泳いでいく クタびれたかい そうかい
溺れるまでサボるかい 誰も手 貸し切れないさ
外道にもなれた 卑怯にでも
で、どうにか生きた ショイ込んで続くんだ 続くんだ
帰らなきゃなんないか 足りないのは時間だけ
ノロマが走って行く しあわせなんてそんなもんだ
遠くまで起きていよう 終いまで見届けよう
イキついたツラで逢おう 待ち合わせなんて要らねえんだ
急ぐコトないさ 独りだろ
寝小便垂れて 温もりを見ろ 夢見ろ
ノロマでGO GO ノロマでGO GO
ヨダレ垂らして 乾かしキってGO
外道にもなれた 卑怯にでも
で、どうにか生きた ショイ込んで続くんだ
泣けんならいいさ 血吐くまで
どうにかなるさ それまで生きろ
生きのびろ〉
寝小便垂れて温もりを夢見ろだよ?
すごい歌詞。本当にハルは天才だと思う。
そしてこの主人公、逃げ場なしだけどまだ諦めてない。
この詞が刺さるヤツは決して幸福な人生とは言えないかもしれないけど不幸では決してない。
先に挙げた人生早漏組の野郎には絶対にわからないだろう。
でもわからないで死ぬ人生こそが本当は素晴らしい人生なのかもしれない。
知らなくていいことも、味わわなくていい屈辱もたくさんあるだろう。
でも俺はノロマに生きてピーズで立ち上がるこの人生で本当に良かった。
いや、本当は良かない。だけど良かったと自分が言ってやらなくてどうする!誰も俺にはなりたくない。そりゃそうだって?
ちくしょう!
あーあ。また自棄酒だ、今夜も。
このコラムも結びの言葉がなかなかどうしてヤケッぱちばっかりになってきてしまった。
というわけで次回最終回。
どうかあと一曲だけお付き合いください。
第20回(最終回):さらば青春/エレファントカシマシ(1997)
セカンド・シーズンとか言いながら、ファーストん時はかろうじて出来ていた「一曲あげてそれに纏わる青春の思い出コラム」というテーマを大幅にそれて、タイトルはほぼBGMに成り下がり、あとはくだらない文章を垂れ流していたことを、竹下編集長や読者の方たちにまず謝罪いたします。
幼少期から面白いということ以外、何の取り柄もなく育ったわたくしがお笑い芸人でも放送作家でもない普通の人生を歩んだことで、この鬱屈したオモシロを吐き出す場所を探すようになりました。それが曽川と2008年に始めたyoungas(ヤンガス)であり、2011年頃から一人でやってる秘太郎プロダクションズでした。
そんな旅の途中で甘噛みに出会いました。
竹下さんとの出会いは今も忘れることができません。
全共闘運動が最も激しかったあの時代、週刊誌編集部で働く記者/ジャーナリストであった竹下さんは、理想に燃えながら日々活動家たちの取材を続けていました。
そんなある日、彼の所に活動家を名乗りわたくし(シノダ)が接触しました。武装決起を起こすなどと語るその言葉は、竹下さんにとってはいずれも真偽定かならぬものがあったようですが、大橋裕之や長尾謙一郎を愛読し、前野健太の『鴨川』なんかをギターでつま弾く姿に、徐々に親近感を覚えていただいたようです。やがてわたくしは学生仲間を引き込んで「仏滅愚連隊」なる組織を作ると、青春パンクと音楽で何か文章を書いてみるという計画を立てました。計画を明かされた竹下さんは自分に独占取材させてくれと頼み、事件に巻き込まれていくことになります。
これがのちの「青春仏滅DISCO」です。
なぜか話のほとんどがマツケンと妻夫木の『マイ・バック・ページ』になってしまいましたので、話を戻します。
要するにTwitterで出会ったわけです。
昔で言うところの出会い系です。
でも元々雑誌甘噛みの読者であったわたくしが、竹下さんに抱かれ、体一つで連載を獲得することに時間はかかりませんでした。
青春というキーワードは、使い古された、死後に近いものです。そこにサブカルなんて要素を入れたら、もうそれはみうらじゅんさんやQuick Japanさんや中野ブロードウェイのタコシェさんにお任せしたほうがいいでしょう。しかしあえて竹下編集長はそのど真ん中の海に「わいが一旗上げるんや!」と、全裸で入っていかれたのであります。その探究心、冒険心たるや、尊敬に値する素晴らしいものです。
そのWEB版でコラムを書きませんか?というつぶやきに手を挙げてこんなに長いことつらつらとやらせていただくことになるとは夢にも思いませんでした。
通算回数はサザエさんと同じ2300回を超え、今や国民的コラムと呼ばれるまでになりました。
それなのになぜ終わるのか?と聞かれれば答えは風に吹かれて誰にもつかめないのさ(ボブディラン)ということかもしれません。
結局青春とは何なのか?まったく答えは出ませんでした。それも青春。なのかもしれませんわなぁ。
未練がましいことを書きそうになってきましたのでこのへんで。
それではみなさん、青春で仏滅でDISCOな毎日をどうかお達者で。
青春仏滅DISCO
〈ファースト・シーズン〉
第1回:MY SOULFUL HEART BEAT MAKES ME SING MY SOUL SONG/GOING STEADY(1999)
第2回:国道二号線/ガガガSP(2002)
第3回:チンチンマンマン/オナニーマシーン(2002)
第4回:童貞ソー・ヤング/GOING STEADY(2002)
第5回(最終回):N.O./電気グルーヴ(1994)
〈セカンド・シーズン〉
第1回:恋したっていいじゃない/渡辺美里(1988)
第2回:はじまりはいつも雨/ASKA
(1991)
第3回:19GROWING UP〜ode to my buddy〜/PRINCESS PRINCESS(1988)
第4回:情けねえ/とんねるず(1991)
第5回:トランジスタ・ラジオ/RCサクセション(1980)
第6回:生活/SAKEROCK(2005)
第7回:東京の空/前野健太(2007)
第8回:若き日々よ/SEBASTIAN X(2009)
第9回:ブバップ/赤犬(2007)
第10回:猫がニャ〜て、犬がワンッ!/neco眠る(2009)
第11回:深夜高速/フラワーカンパニーズ(2004)
第12回:サマーヌード/真心ブラザーズ(1995)
第13回:ミッキーマウス・マーチ(1955)
第14回:primal./BiS(2011)
第15回:Captain of the Ship/長渕剛
(1993)
第16回:ザーメンブギー/豊田道倫&ザーメンズ(2011)
第17回:小さな恋のうた/MONGOL800(2001)
第18回:Butterfly/木村カエラ(2009)
第19回:ノロマが走っていく/Theピーズ(2005)
第20回(最終回):さらば青春/エレファントカシマシ(1997)
追伸
このコラムがあなたの素晴らしい人生にハナクソぐらいでいいから残りますように。そして、辛い時に一瞬だけでもクスッと笑える助けになりますように。
あ。エレカシのこと書くの忘れた!
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